きおくにないうみ ver.3

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□ Mélodie de vie □

15. 飲みすぎ食べすぎ

(……それにしても)
 こうしてシリアスな話をしている最中も、ポルトスは絶え間なく食べ続けている。最初は、真剣に耳を傾けていたアラミスだったが、次第にその旺盛な食べっぷりに呆れてきた。
「こんな時によく食えるな」
「まあな」
「ベルイール前より太っただろ」
「まあな~」
 にんまりと、ポルトスはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。まったく皮肉が通じない。アラミスは脱力してテーブルへ突っ伏した。そんなやり取りをしていても、ポルトスは意に介する様子もなく、黙々と咀嚼しては飲み込み、また新たな皿へ手が伸びる。
「図太いというか、何というか」
「まあな~。俺もそう思っていたんだが」
「違うとでも?」
「ここ最近、ずっとアトスと二人だっただろ。近ごろアラミスは付き合い悪いし」
「う、うん」
「たった二人なのに、つい4人分の飯と酒を注文しちまうんだよなあ」
「4人……」
 アラミスががばっと顔を上げた。
「4人分っ?!」
「そう。ダルタニャンが仲間になってからの習慣だな」
 ポルトスは何でもないように言ってのけた。
(なんて食欲だ…)
 絶句したアラミスだったが、やがて胸の内に一つの推測が浮かび上がってきた。本人は気づいてないのかもしれないが、これはポルトスなりの悲嘆の表れではないだろうか。
「アラミスだけじゃなくて、アトスも食欲ないって言うんだよ。でも、こんなにたくさん注文したのに残したらもったいないだろ。だから俺が4人分の飯を食べて、代わりにアトスには酒の方を片付けてもらう。考えてみれば一ヶ月の間、ずーっとこんな食生活だったからな。どうりで俺は太るし、あいつは酒臭くなるって訳だ。ははは」
 ポルトスはさも愉快そうに笑った。しかし、目の前にいる大男の傷心に気付いてしまったアラミスは到底笑えなかった。
(太っただの図太いだの、本質が見えてないのは私の方じゃないか)
 先ほどの無神経な軽口を思うと、無性に後悔の念が襲ってきた。
「…すまない」
「なぜ謝る?」
 ポルトスがきょとんとした顔で見下ろす。
「なぜ…と言われても」
 アラミスはかける言葉が見つからず、とまどうように口ごもった。
「おかしな奴だなあ」
 ポルトスはからからと笑った。笑いながら、冷えて油の浮いた煮込み料理をまた口へ運ぶ。その様子を眺めているうちに、アラミスは心のもやが晴れていくのを感じた。
(…やれやれ。憂鬱な物思いなど、ポルトスにかかればどうでも良くなってしまうな)
 結局、自分一人で出来ることなどたかが知れている。あれこれ悩むよりも、必要とされた時に備えて、ポルトスのようによく食べてよく眠り日常生活を維持するのも、一つの境地に違いない。
(ポルトスの場合、そこまで深く考えてなさそうだけれど)
 だが、その自然体こそがポルトスの強みなのだろう。
 吹っ切れたアラミスは手袋を外して袖をまくると、唐突に皿を取った。
「よしっ、これ以上ポルトスが太らないように、今夜は僕も目一杯食べてやる!」
「おっ、いい心がけだ」
 ポルトスはにやりと歯を見せると、アラミスの肩を力任せにどかどかと叩いた。
「…っ! この馬鹿力め」
 アラミスは仰け反りながら、抗議するように右手のナイフを突き出した。応えるように、ポルトスがナイフを合わせる。
「ほーら、食わないから体がヤワになるんだ」
 ナイフの切っ先が重なり、かちん、と小さく金属の音が鳴った。それは、まるで剣を重ね合わせる友情の誓いのようで――
 同じことを考えたのだろう。二人は顔を見合わせてくすりと笑った。
 アラミスの肩にはきっと真っ赤な手の跡がついているに違いない。じんわりと熱を感じる。痛いやらおかしいやら、アラミスは目尻に滲んだ雫を慌てて拭った。



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プチ(じゃなくなってきた)あとがき

1話分を分割したので、内容を増やそうと足掻いたらポルアラっぽくなりました。
素敵な?ディナーみたいな雰囲気ですが、周りはゴミ溜めです。踏みつぶされた食べ物の残骸と死屍累々…(いや、死者は出てない!)

当初は「四人目の食事=ポルトスが密かに陰膳を供えていた」という流れでしたが、陰膳って日本の風習なんですよね…(汗) さすがに変だと思って止めました。

さて、冬コミのスペースが取れてしまったので、更新ペースを落とします。12月に再開するとして、今年中に終わるかどうか微妙なラインだな~。
拍手やコメント、いつもありがとうございます。モチベーション維持するのに効果絶大です。話の続き、お待たせしてしまいますが、何とぞご容赦くださいませ。

ちょっと裏話。
文末に次回サブタイが書いてある場合、次回作は大体できあがってます。今回のように書いてない場合は、プロット段階か真っ白な状態です。
また、更新履歴には載りませんが、後で次回サブタイだけ追加することもあります。もちろん誤字脱字は随時更新。

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Date:2010/11/19
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