きおくにないうみ ver.3

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□ 二次小説・短編 □

かの物言いに君は何を思う

前のサイトで14444HIT申告を頂いた暁香月様へ進呈作でした。
テーマは「四銃士が出てくる楽しいお話」とのこと。

***

「今日も込んでるな」
 馴染みの酒場兼食堂の扉をくぐる。夕方ともなれば、中は相当ごった返している。とはいえ、繁忙時間前ということもあり、まだいくらか席は残っている。アトス、ポルトス、ダルタニャンの三人は、入り口から見えやすい一角を選び、腰を落ち着けた。
 椅子を一脚、忘れずに確保しておく。
 ベル・イールでの四銃士の活躍が噂になり、最近になって急に新人が増えた。剣術師範は忙しいらしく、アラミスだけ後から合流することになっていた。

「最近、入ったあいつは…」
「新しいつり帯を仕立てたのだが、あの店はどうも…」
「大きな声では言えないが、近頃のルーブルは…」
 酒が入ると口も軽くなる。他愛無い世間話から、噂話や色恋話に護衛隊の悪口まで──。いくら騒々しいとは言え、誰が耳をそばだてているか分からない。内容次第では声を潜めることもある。
 ちょうどそんな話をしている時だった。



 突然、ダルタニャンは頭をがしがしとかき回された。
 頭上からは、聞き慣れた涼やかな声。
「何を話しているのかな?」
 三人が顔を上げると、声の主はダルタニャンの頭に乗せていた右手をひらひらと振った。
「アラミス…」
「遅くなってすまない。でも、三人そろって気付かないなんて、随分と盛り上がってるじゃないか」
 にこやかなアラミスとは対照的に、三人は興を削がれたように黙った。
 アラミスは空いた席に座り、呼び止めた店員に自分の分を注文しながら、かまわず続けるよう促した。
 三人は一瞬目配せしたものの、口を閉ざしたままだった。
 アトスはグラスを口に運びワインの風味を入念に味わい、ポルトスは口一杯に肉をほおばり、さも今喋れませんといった様子だ。だが、どちらも露骨でわざとらしい。ダルタニャンに至っては、きょろきょろとやり場の無い視線も、わたわたと行き場のない手も、きわめて落ち着きがない。
 アラミスは眉をひそめた。
「なんだ? 私に聞かれて困る話か?」
「まさか!そんなことある訳ないじゃないか」
 とっさに言い繕うダルタニャンだったが、へらへらした笑みはいただけない。
 ほおづえをつきながら「ふーん」と言ったきり、アラミスは押し黙った。
 だが、半目の奥で光る瞳は笑っていない。手持ちぶさたげにくるくると回転させているナイフが恐ろしい。
 ダルタニャンの額に、ぷつぷつと油汗が浮かぶ。
「…感じ悪いなあ」
 ぼそりとアラミスがつぶやいた。
 にじんだ油汗が、ダルタニャンのこめかみを伝っていた。



 一人で矢面に立たされたダルタニャンを哀れに思ったのだろう。ようやく、アトスが助け舟を出した。
「まあまあ。あまりダルタニャンを責めるな。別にアラミスの悪口を言っていた訳じゃない。大した話ではないが、少しばかり下世話な内容だったんでな」
 続いてポルトスも、今がチャンスとばかりに釈明を始める。
「そうそう。声高に話すのも、なんだし…。それに普段からアラミスは下品な話には乗ってこないじゃないか」
 ダルタニャンは、ぶんぶんと勢い良くうなずいている。
 しばらくしかめ面をしていたアラミスだったが、三人の必死なフォローが滑稽だったのだろう。堪えきれないとばかりに、ぷっと噴き出した。
「ばかだなあ。私が銃士隊に在籍して何年経つと思ってるんだ。…下世話な話、か。確かに自分から話題にしたことはないかもしれない。でも口汚い話なんていうのは、慣れっこなのに」
「そうは言うが…」
 一旦、アトスは言葉を切った。アラミスの食事を運んできた店員が遠ざかるのを待ち、少し声を潜めながら、
「つまり、だ。…女性の耳に入れて良い話ではない、ということだ。分かってくれ」
と続けた。ダルタニャンとポルトスも、うんうんと同意する。
「何を言うかと思えば、そんなことか。私も甘く見られたものだな…」
 アラミスは呆れた。彼らなりの気遣いなのだろうが、自分だけ疎外されてるようで、あまり気分の良いものではない。
 ふん、と不満そうな吐息を漏らしながら、目の前の食事に取りかかろうとしたアラミスは、ふと名案を思い付いた。
「それなら、君たちが何を話していたか当ててみせようか」
 唇の端を持ち上げ、挑戦的な笑みを作ると、一同を見回した。アトス、ポルトス、ダルタニャンが顔を見合わせるのを尻目に、早速アラミスは考え始めた。
「コンスタンス殿一筋のダルタニャンがいるからには、女関係の濃い話は無理だな…。とすれば、敵方の悪口か?『鉄仮面一味は○○な奴だ。ミレディーもマンソンも○○に違いない』といった線が妥当かな?」
 アラミスが自信たっぷりに言い放った。



「……………」
 周囲のざわめきとは裏腹に、アトスもポルトスもダルタニャンも固まったように沈黙した。アラミスは、その沈黙を別の意味で解釈したらしい。
「あ、違ったか?ならば枢機卿側か…?『リシュリューもロシュフォールも○○だ。○○で○○だろう』いやいや、むしろ…」
 アラミスが挑むように言葉を続けるので、さすがの三人も慌てふためいた。
「ち、ちょっと待ってくれ。そこまで言ってない…」
「いくらリシュリューでも、一応は枢機卿という立場があるのだから、そんな事はないと思うが…」
「…僕、考えたこともなかったよ」
 そろって口々に否定する。
 三人の否定的な反応に怯んだものの、このままうやむやにされては悔しいとばかりに、アラミスは更なる予想を口にした。
「そ、それじゃ『護衛隊の連中は○○だ。隊長のジュサックは○○だから○○で○○』とか?」
 そして、上目遣いで様子を窺った。



「……………」
 沈黙。
 アラミスとしては控えめに言ってみたつもりだったのだが、当の三人はまるで凍り付いたかのように黙りこくっている。
(…まずいことでも言ったかな?)
 先ほどまでの勢いはどこへやら、アラミスの背中を冷たい汗が伝った。

 場の沈黙を破ったのは、ポルトスの笑い声だった。店中に響き渡る豪快な笑いに、周りの客までぎょっとして四人を振り返った。
「アラミス!お前がこんなに面白い奴とは思わなかった!」
 そう言いながら、バシバシとアラミスの背中を叩いた。アラミスは顔を歪め、ポルトスを払いのけようとしたが、重さが倍はありそうな巨漢を押しやるのは到底無理である。
「痛いぞ!少しは力を加減しろ」
 精一杯の怒声も、涙をにじませるほど笑い転げているポルトスの耳には入っていないらしい。
「変に気を回して悪かったな。しっかしアラミスの毒舌にはまいったよ。それでこそ、おれたちの仲間だ」
「痛いって。ポルトス、いい加減にしろ。アトス!ダルタニャン!ポルトスを止めろっ…って、聞いてるのか?おい」



 一方。
(女の人って、キレイな顔して凄いこと考えてるんだなあ…。まさかコンスタンスも…?でも、まさか、コンスタンスに限ってそんな…そんな…)
 女性に対する幻想を打ち砕かれたダルタニャンは、ショックのあまり、もんもんと考え込んでいた。

 さらにもう一方。
(昔の経験でよくわかっていたはずではないか。見た目の美しい女に限って、実際はとんでもないものなんだ。それなのに…、今になって何故こんなに落ち込んでいるのだ、私は…)
 何か嫌な過去を思い出したらしいアトスは、振り払うようにぐいぐいと酒を流し込んでいた。

 ダルタニャンがアトスから、彼独特の女性観を説教される日も、さほど遠くないかもしれない。

***

あとがき

暁香月様のリクエストは
「四銃士が出てくる楽しいお話」でした。
楽しいかどうかはともかく、とりあえずコメディっぽい感じで仕上げてみました。

うーん…、四銃士のお話のはずが、いつもアラミスが目立ってしまいます。
別にこだわりはありません。彼女を中心に据えた方が、話が動きやすいだけです。
アニメ後半、アラミス主人公状態になってしまっているのも、スタッフがこんな心境だったのかもしれませんね。

実験的に、ちょっと言葉遊びをしてみました。
がしがし、ひらひら、きょろきょろ、わたわた…
繰り返すタイプの状態副詞を多用することで、軽快な感じを出したかったのですが、効果の程は微妙。
(2004.03.11)
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Date:2004/03/11
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