きおくにないうみ ver.3

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□ Mélodie de vie □

11. 立てこもり

 大衆向けの食堂や酒場が立ち並ぶ通りがやけに騒がしい。約束した居酒屋に近づくと、辺りに数名の男が倒れていた。みな一様にケガを負っている。
(まさか…)
 騒ぎの発端は、当の店のようだ。アラミスは野次馬をかき分けて店の中に入った。散乱する椅子や皿、踏み荒らされた食べ物の残骸をひょいひょいと器用に避けながら、辺りを見回す。
「……」
 ポルトスもアトスも見当たらない。その時、「お客さん、困ります!」という悲痛な叫びに続いて「ここを開けろ!」と、覚えのある声が聞こえた。無人の厨房を通り抜けて裏口をのぞくと、店主とポルトスがいた。
「おい、どうした」
 アラミスが声をかけると、二人は同時に振り返った。ポルトスが安堵した表情を浮かべる。
「アラミス、いい所へ」
「お客さんの知り合いですか。助けてください!」
 二人にすがりつかれたものの、アラミスは訳が分からない。
「あれはお前の仕業か?」
 アラミスが親指で店の方を指し示すと、店主がぶんぶんうなずいた。だが、ポルトスは納得できなかったらしく「こいつ! 俺たちのせいにする気か」と凄んで、店主の首根っこをつかんだ。
「ひっ、苦しいぃぃ。殺されるう」
「絞めてないだろうが!」
「下ろしてやれ」
 アラミスに言われてポルトスが手を離すと、店主は膝をついてぜいぜいと喘いだ。
「何があったんだ。アトスはどこに行った」
「ここだ」
 ポルトスがあごでしゃくったのは、古びた酒蔵だった。

 アラミスは酒蔵の扉に手をかけたが開かない。
「無駄だ。内側から鍵かけちまってる」
「アトス、僕だ。ここを開けろ。……寝てるのか?」
「寝てないと思いますっ」
 ポルトスの絞め技から立ち直った店主が、再びアラミスにすがってきた。巨漢のポルトスより、柔和な面差しのアラミスの方が話しやすいと踏んだのだろう。
「あのアトスとかいう銃士、うちの酒蔵に立てこもって、店中の酒を全部飲み干してやるんだって」
「はあ?!」
「ああ、こうしている間にもうちの在庫が~」
 昨日ブルゴーニュの上物が入ったばかりだったのに…とぶつぶつ言っている店主を無視して、アラミスはポルトスに尋ねた。
「外で倒れてる連中を見たが、まさか民間人相手に喧嘩したのか?」
「剣は抜いてない。吹っかけてきたのは相手の方だし」
「でも先に手を出したのはあなた方ですよ!」
 店主が口を挟んだ。すかさずポルトスが「なんだとっ」と突っかかる。アラミスは頭が痛くなってきた。
「やめないか! まったく…店に迷惑かけるなよ」
 アラミスは眉根を寄せて、ポルトスを睨んだ。今夜は物思いに耽りたい気分だったのに、完全に興を削がれてしまった。
「ちょっと待ってくれよ」
 ポルトスが口を尖らせた。
「こいつ、調子いいこと言いやがって。一方的にこっちを悪者にして喧嘩を煽ったのはあんただろうが」
「ああ、それなら主人にも非があるな」
 店主が頼みにしていたアラミスは、あっさりポルトスの味方に回った。
「そんなあ…」
「このままじゃ埒があかない。ポルトス、この扉をぶち壊せ」
「よし来た」
「そんなあぁぁ~」
 愚かな店主は、品のいい優男に見えるこの銃士も所詮は銃士なのだと思い知った。
「謝りますから、どうかお許しを。これ以上店の物を壊さないでください!」
「仕入れたばかりの高級酒が空になっても構わないなら止めるが」
「空なんて、まさか、そんな」
 店主が頬を引きつらせた。
「いや、あり得るな。アトスは一度言ったことは必ず成し遂げる男だ」
 ポルトスが顎をなでながら、うんうんとしきりにうなずく。
「う……」
 店主がうなだれたのを了承と受け取ったアラミスは、
「気の毒だが相手が悪かったな。ポルトス、やれ」
と促した。
「よっしゃあ」
 数歩下がったポルトスが、その体重を充分に乗せて体当たりすると、一撃で扉は吹き飛んだ。扉が酒蔵の中に倒れた勢いで埃が舞い上がる。もうもうと立ちこめる白い煙幕の奥、壁を背にアトスがいた。



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プチあとがき

また脱線してるな~と思いつつ、もったいないので更新しました。
原作(アニメじゃなく、ダル物「三銃士」)のエピソードを意識してみました。…と言っても、手元に原作ないので全然違う気がします…。

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Date:2010/10/29
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