きおくにないうみ ver.3

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□ Mélodie de vie □

3. 行方


 ベルイールを見通せる岸から少し離れた高みに、銃士隊や護衛隊がそれぞれ陣幕を張っていた。一番奥の安全な区画には国王ルイ13世が鎮座し、トレビルたちが練った作戦を持ち寄り最終決定する。
 戦局が定まりつつある現在は、自軍の陣幕に戻り、前線から戻った各隊士から報告を聞いていた。

「首謀者のうち、マンソンはアラミスが倒しました。断崖から落下したのを確認しています」
「うむ」
「鉄仮面とミレディはいまだに逃走しており……」

 よどみなく報告していたアトスの言葉が詰まった。不審に思ったトレビルが顔を上げる。
「どうした?」



 戦局が動いているらしく、陣幕に出入りする者が後を立たない。本来なら、女一人で銃士隊の陣幕に出入りしようものなら咎められるだろう。しかし、王妃の侍女として普段から懇意にしているせいか、コンスタンスはすんなりと奥へ通された。トレビルを尋ねると、ダルタニャンとそう変わらない年頃の見習い銃士が、隊長に取り次ぐと言って奥へ消えた。

 奥には先客がいるらしく、声が漏れ聞こえる。ポルトスの話していた通り、アトスがトレビルに戦況を報告しているのだろう。もしかしたらダルタニャンも中にいるかもしれない。
 コンスタンスの逸る気持ちを知ってか知らずか、見習い銃士は話の区切りがつくのを待つつもりのようだ。

 急ごしらえのテントでは、幕越しに話が漏れ聞こえてしまう。コンスタンスは悪いと思いながら耳をそばだてた。
 行動が制限される王妃に代わって、情勢を探るのも侍女の役目である。若いコンスタンスも、そんな侍女の習性が染み付いてしまっていた。いや、そもそも早く取り次がない見習い銃士が悪いのだと、コンスタンスは自分を納得させる。

「既に砦は崩壊して、抵抗する者も少なくなり、捕縛は順調です」
 コンスタンスは、三銃士の中ではアトスが一番落ち着いた人間だと思っていたが、いつもより早口になっている。情勢は悪くなさそうだが、アトスの言葉が緊張をはらんでいると感じるのは気のせいだろうか。

 地下の脱出路に隠されていた大量の火薬が爆発したこと…
 首謀者の鉄仮面とミレディが逃亡を図っていたこと…
 両者とも行方不明だが、木っ端みじんの潜水艇が発見されたこと…
 そして……



「何だと」
 トレビルが勢いよく立ち上がったために、戦地用の簡素ないすが倒れた。
「は、首謀者二名を追っていたダルタニャンが行方不明になってまして……」
 アトスが言葉を濁した。
「それは確かな情報なのか?」
「ダルタニャンが単身で地下へ向かったのは確かです。信じたくありませんが、爆発に巻き込まれた可能性も」
 トレビルは握りこぶしを机に叩き付けた。傍らの見習い銃士がびくりと震えたが、トレビルもアトスも気づかない。
「あのバカ…!」
「銃士隊と護衛隊が、目下全力で捜索に当たっています。ただ、爆発によるガレキで、思うようにはかどらないようです」
「わかった。陛下に進言して直ちに人足の手配をしよう」
「……隊長からの命がなければ、私も現場に戻るつもりです」
「うむ」
 アトスは敬礼するとトレビルに背を向け、端で控えていた見習い銃士と入れ替わる。
「失礼します。外にアンヌ王妃の侍女の方がお見えになっております」
「何?!」
 アトスとトレビルが同時に声を上げた。「コンスタンスか?!」アトスは慌てて出入り口の幕を上げたが、そこには誰もいない。
「あれ? さっきまでそこにいたのに」
「まさか今の話を……」
「ばかもの! なぜすぐに取り次がんのだ」
「も、申し訳ありません」
 あまりの剣幕に、見習い銃士が縮こまる。彼に罪はない。雰囲気に飲まれて、声を挟めなかったのだろう。トレビルや三銃士を相手に、臆さない見習い銃士はダルタニャンくらいだ。
「アトス、コンスタンスを追うんだ。何かあったら王妃様に申し訳が立たん」
「はっ」
 アトスは鋭く敬礼すると、恐縮している見習い銃士に一瞥もくれずに足早に去っていった。



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プチあとがき

またオリキャラ。自重しないと。
コンスタンスは王妃付きの侍女という設定になってますが、密書を預かったりスパイじみた活動もかなりやってますよね。衣装係と言うのは、きっと表向き。一般人出身の侍女が重用されるのは、いざという時に捨て駒にできるからなのかな~なんて考え過ぎでしょうか。
アンヌ王妃は下心ないと思うのですが(アニメ限定)シュブルーズ夫人はしたたかで策を弄するイメージ。コンスタンスの雇い主はアンヌ王妃だけど、上司はシュブルーズ夫人ですよね、多分。

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Date:2010/08/28
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